ファクタリングの語源と歴史
前回までのコラムで、健全経営のために大切なのは現金の流れを把握すること、ただ「掛取引」がそれを難しくさせている、ということについてご紹介しました。
信用によって成り立っている掛取引は、納品してから入金まで時間がかかるため、未回収リスクがつきまといます。そこで、最近注目されているのが「ファクタリング」です。
ファクタリング(factoring)とは代理商、問屋、仲買人などの意味をもつ「factor」から派生した言葉で、売掛債権(商品やサービスの代金を請求できる権利)を第三者に売却し、買い取った側が回収を行う金融サービスのことです。通常1〜3カ月かかる売掛金の回収ですが、ファクタリングを利用することで、期日前に現金化できます。
ファクタリングの歴史は意外と古く、16世紀のイギリスで生まれたと言われています。17世紀以降、イギリスとアメリカの交易で使用され、20世紀初頭にアメリカで金融サービスとして発展しました。欧米では中小企業の資金繰りとして一般的な手法で、アメリカの市場規模は日本の5〜10倍とも言われるほどです。
日本政府もファクタリングサービスを推奨
日本でファクタリングサービスが始まったのは、1970年代でした。都市銀行の子会社が始め、信用調査や債権回収なども含むコンサル的な内容だったようです。ただ手形取引などのサービスと類似点があったためか、そこまで認知度は広がりませんでした。
その後1991年にバブルが崩壊、手形取引が減少していきます。それとともに、ファクタリングが注目され始めました。
最近では、経済産業省もファクタリングによる資金調達手法を推奨していることをご存知でしょうか。
参考
【経済産業省:中小企業における資金調達の課題〜売掛債権担保及び動産担保の活用に向けて〜】
http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/keizai_prism/backnumber/h19pdf/20073801.pdf
【経済産業省中小企業庁:売掛債権の利用促進について】
https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/2004/download/040203urisai_panhu2.pdf
中小企業は大企業に比べて資金調達手段が少なく、株式や社債などによって直接資金を得ることが厳しいのが実情です。そのため、不動産を担保として銀行に借り入れするケースが多くなるわけですが、不動産の価値は安定しません。ですから、その打開策として「不動産に依存しない、売掛金を利用した資金調達手法」を推奨しているわけです。
大企業の倒産も増えてきている今、中小企業の発展が日本経済を支えると言っても、決して過言ではないでしょう。これからの日本経済を考える上でも、既存の資金調達手法にこだわらず、柔軟な金融サービスの活用がこれからの経営者には求められるのではないでしょうか。
2つあるファクタリングの契約形式
ファクタリングは契約形式として大きく「2社間」と「3社間」があります。
もともとファクタリングと言えば、「3社間ファクタリング」でした。3社間ファクタリングとは、ファクタリング契約を①ファクタリングを利用する会社(売掛債権の持ち主)②ファクタリング会社③売掛先(支払企業)の3社間でするものです。
ただ、このサービスは「売掛先(支払企業)の同意を得る」というプロセスが必要となるため、現金化までに時間がかかってしまいます。また、ファクタリングの事実が売掛先に知られると、状況によっては「経営が危ないのでは?」というような信用不安につながる可能性も否めません。
一方「2社間ファクタリング」とは、ファクタリング契約が①ファクタリングを利用する会社(売掛債権の持ち主)と②ファクタリング会社との2社間で行われるものです。2社間で行われる取引のため、売掛債権の譲渡を取引先に知られずに済み、最短即日〜数日で資金調達できるのが特徴になります。
私がこれまで担当した中小企業や個人事業主の多くは、取引先に売掛金の売却を知られたくないとおっしゃり、2社間のファクタリングを利用するケースがほとんどでした。
銀行融資とファクタリングの違いとは
上でも述べたように、不動産に依存しない資金調達方法として注目されているのがファクタリングです。融資ではなく、借金ではないというのも大きなメリットと考えられるでしょう。次回は、銀行融資との違いについて解説します。