3つある資金調達方法を知る
経営者にとって事業資金をどう調達するかは、日々頭を悩ませる大きな問題ではないでしょうか。「あてにしていた銀行融資が受けられなかった」と、急遽お客様が私のところに相談に見えるという経験も、これまで幾度となくありました。
たくさんのお客様とお話しさせていただき気がついたのは、「資金調達と言えば銀行融資だけ」と考えてしまっている経営者が少なくない、という実情です。
資金調達には銀行融資だけではなくさまざまな方法があり、大きく分けると以下の3つがあります。
①「増資」による資金調達
②「負債」による資金調達
③「資産」による資金調達
「増資」によって資金を調達する
資本金を増やす手続きを「増資」と言いますが、具体的には新株を発行して資金を調達します。つまり、投資家から投資してもらって資金を集める方法です。銀行から借り入れする融資とはちがい、返済が不要という点が大きなメリットです。返済が不要ですから、資金が減る心配をする必要がありません。
将来的に利益が出た場合は、投資家に配当します。それを期待して、投資家は投資する、というわけですね。最近ではネット上で資金を募る「クラウドファウンディング」というサービスも定着してきましたが、このクラウドファウンディングも「増資による資金調達」のひとつです。
ただ、この増資を受けるには、将来性を感じてもらえるビジネスかどうか、経営者の才覚、会社としての信用度など、投資家による厳しいチェックをかいくぐる必要があります。そのため、個人事業主や小さな中小企業にとってはハードルの高い資金調達法と言えるでしょう。
「負債」によって資金を調達する
もっとも一般的な資金調達方法がこちらかもしれません。銀行や信用金庫などからお金を借りて(=融資)、事業資金へと当てます。借りたお金は、定められた期間・利息のもと、返済していく必要がある「負債」です。
融資を受ける期間のなかで一番金利が低いのが、政府系金融機関、地方公共団体などの公的機関。低金利というメリットはありますが、その分、1つの支店あたりの利用企業数が多く、きめ細やかな対応は期待できないというデメリットも指摘されます。
一方、一番多く利用されているのが「銀行融資」でしょう。手続きとしては申し込み後、審査がなされ、融資が決まれば契約、その後入金という流れになります。手数料は利用する金融機関によって異なりますが、メガバンクなら一般的に1.5〜5%程度です。
ただ、貸し倒れリスクを避けるため、審査は非常に厳しく、時間もかかります。そのため、資金調達を急ぎたいときには適さない資金調達法になります。なお、ビジネスローンもこの「負債による資金調達方法」に含まれます。
「資産」によって資金を調達する
最後に説明するのが「資産による資金調達法」です。「資産」とは、会社が保有する財産のこと。預金、株式、不動産、自社ビル、社用車、設備、さらに債権なども含めて「資産」となります。それでは、これらの資産をどうやって資金に変えるのでしょうか。
一番わかりやすいのは、所有する不動産や有価証券を売却することで現金を得て資金にする、という方法でしょう。無駄な在庫を抱えている状況なら、それらを売却するというのも有効な手立てです。ただこれは、「売れる」ものがなければ成り立たちません。いくら土地や設備があっても、事業に必要であれば売ることはできず、現実的に使うシーンは限られると思います。
そこで注目したいのが「売掛債権」を活用した資金調達方法です。前回までのコラムでもご紹介しましたが、売掛債権とは提供した商品やサービスの代金を受け取る権利のこと。代金を受け取るまでには1〜3カ月ほど時間がかかるのが通常ですが、この売掛債権を売却することで、実際に代金が支払われるよりも前に現金化する金融サービスを「ファクタリング」と言います。
手数料は発生するものの、ファクタリングを利用すれば即日現金化することも可能です。
銀行融資とファクタリングの違い
融資やローンなどはあくまで借金であり、毎月の返済が必要となります。一方で、ファクタリングは借金ではなく、売掛債権を売却することで資金を調達する方法です。金額の上限としては、融資の場合、会社の規模によって変わりますが、300万〜3億円程度となります。ただ、借りすぎてしまって返済に行き詰まる、という危険性もはらんでいるため、注意が必要です。
一方、ファクタリングは、売掛金の金額が上限額となります。基本的には月商以上の金額は調達できないため、身の丈にあった資金調達方法だとも言えるでしょう。融資を受けるまでの時間を比べると、融資の場合は1〜3カ月程度かかりますが、ファクタリングなら即日〜数日程度で資金を調達できるのが一般的です。
そのため、今すぐ資金が必要という場合は、ファクタリングを使った資金調達方法を考えてみてもよいかもしれません。
次回は、実際にファクタリングを使うと、キャッシュフローがどうなるのか解説していきたいと思います。