経営の安定のために売掛金を管理する
〜信用取引にはらむリスクを回避〜

経営の安定のために売掛金を管理する 信用取引にはらむリスクを回避

キャッシュ・フローをややこしくする「掛取引」

前回のコラムでは、健全な経営のためにはキャッシュ・フローを意識する必要があることを説明しました。そもそも、私が説明するまでもなく、「キャッシュが大事」ということは、大抵の経営者は経験上理解しているかと思います。ただ、それを難しくさせている要素に、「掛取引」があるのではないでしょうか。

「掛取引」とは商品代金の支払いを、商品購入時や販売時ではなく、決められた期日までに後払いする取引方法です。いわゆる「ツケ払い」のことで、信用がないと成り立たない取引であることから「信用取引」とも呼ばれます。日常生活においては、商品を買ったらその場で代金を支払う「現金払い」が通常なのであまり馴染みがありませんが、企業間の取引では現金払いではなく「掛取引」が一般的です。たとえば、毎日食材を仕入れる飲食店がその都度現金で支払って仕入れると、やり取りが増えて煩雑となり、業務的にも大変になってきます。ですから、掛取引によって月末にまとめて支払うなどのルールを決め、やり取りをシンプル、かつスムーズにしているわけです。

 

資産である「売掛金」を管理して、健全な経営に

売った商品の代金を後日いただく掛取引を「売掛金」、購入した商品の代金を後日支払う掛取引を「買掛金」と言います。

売掛金は、売上として計上しているけれど、代金は翌月以降に支払われ、現状未回収の状態です。一般的には1.5カ月以内に回収が見込まれるものを指し、勘定科目としては流動資産に区分されます。実際の代金が納入されるまでは、代金を受け取る権利(「売掛債権」と言います)だけを保有しているだけなので、現金として回収できるまで、務めていく必要があります。

気をつけたいのは、売掛金には時効が存在することです。扱うサービス内容によって期間は違いますが、たとえば医師の診療報酬は3年、商品の売買代金は2年、宿泊費は1年など法律で定められた時効期間を過ぎると、回収する権利がなくなってしまいます。

この回収を怠ったせいで資金ショートをしてしまっては、本末転倒もいいところです。会社の健全な経営のために、取引先の売掛金の状況を管理しておくことが大事だと、肝に命じてほしいと思います。

 

売掛金の未回収を防ぐために

掛取引は信用によって成り立っていることは、先ほども申し上げた通りです。ただ、いくら付き合いの長い取引先でも、必要以上の掛取引はリスクを伴います。ですから、取引先を審査し、掛取引の限度額を設けておくことが望ましいでしょう。

また、取引先には売掛金の残高を定期的に通知し、常に入金確認を行うことも、未回収を防ぐために欠かせません。期日に回収できていないときは、即座に取引先に連絡を入れてください。意外と、「入金処理が抜けていた」などというケースも少なくありません。その際は、「いつまでに入金されるか」も忘れずに確認するようにしましょう。それでも入金されない場合は、督促状や内容証明を送るなどもひとつの方法です。

 

未回収リスクを避けるための「ファクタリング」の活用

いろいろな対策を施しても、売掛金の未回収リスクはつきまといます。たとえば、取引先が倒産してしまえば、法的拘束力のない売掛金は回収が非常に厳しくなります。信用のもとに成り立つ「掛取引」は、経営を圧迫しかねない危険性があるということを、経営者は忘れてはいけません。

そこで活用したいのが「ファクタリング」です。未回収リスクを避けることができるファクタリングは、欧米では主流の資金調達方法となっています。

次回はこのファクタリングについて、わかりやすく解説していきたいと思います。

 

経営の安定にはキャッシュが大事
〜「キャッシュ・フロー経営」とは

健全な経営のために、現金の流れを意識する

経営者なら誰しも、無駄な借り入れをせず、資金ショートしない“健全な経営”を目指しているのではないでしょうか。今回は、健全な経営をするために押さえておきたい「キャッシュ・フロー経営」について考えたいと思います。

会社経営には、お金の出入りが常にあります。たとえば、材料を仕入れ、それを元に商品を作って販売する。その代金が支払われることでお金が入ってくる。こういった企業活動の一連の流れに、お金が出たり入ったりするわけです。このお金の出入りを「キャッシュ・フロー」と言います。

健全な経営には、このキャッシュ・フローがマイナスにならないようにしなければなりません。シンプルに言い換えれば、現金収支がマイナスにならないよう、しっかりと把握・管理していく必要があるということです。

 

手元資金を確保して、倒産リスクを避ける

以前、担当したお客様の事例をお話ししましょう。工務店を営むお客様でしたが、とある現場の納期が遅れ、予定していた現金回収が大幅にずれ込みそうになったそうです。その間、人件費や税金などの支払いは当然止めることができません。そのため、資金繰りに行き詰まった、ということで当社に相談にお見えになりました。

大きな金額が入ってくる仕事を請け負っているのに、手元の資金がないために経営に行き詰まる……。こういったケースは本当によくあります。建築関連や大掛かりなシステム開発など、納期に時間がかかる業種では特に多いのではないでしょうか。

ひとたび資金ショートしてしまうと、会社は倒産しかねません。長い目で見れば黒字(いつか収益が入ってくる)だけれど、近々の資金がなく倒産してしまう「黒字倒産」というケースも中にはあります。ですから、手元資金、つまり現金収支を意識した経営をしていくことが大切なのです。

 

キャッシュ・フロー経営で、企業信用力を高める

キャッシュ・フロー経営とは、現金の流入と流出を重視したシンプルな経営をすることです。

一般的に「利益は意見、キャッシュは事実」とよく言われます。

たとえば、代金後払いで商品を売った場合、「損益計算書」では「売上」として記載し「利益」となりますが、代金後払いのため実際のお金の流れは違います。また、製品を作るため設備購入するなどした際、キャッシュ・フローでは一括で費用を計上する一方、会計ルール上、減価償却費として数年にわたって費用計上すると、結果的に計算される利益は異なってくるわけです。そういったことが、「利益は意見、キャッシュは事実」と言われる所以となります。

目に見える“キャッシュ”は嘘をつきませんから、企業の中心的な事業によって、どのくらいのキャッシュが残っているかを把握・管理していくことがとても重要なわけです。もし、お金の流れがマイナスなら資金がショートしかねないという判断材料ともなり得るでしょう。その際は、売掛金回収サイトを短縮する、買掛金支払いを延期するなどの検討をする必要も出てきます。

資金ショートしそうになってから急な借り入れを検討するような企業を、「計画性がない」と判断し融資をしない銀行も少なくありません。だからこそ、キャッシュ・フローを重視し計画的な経営をしていくことで、資金繰りは安定し、対外的な信用力も高まっていくのです。

 

キャッシュ・フロー経営のためファクタリングを活用

先ほどご紹介したような事例のように、先々に入金予定の収益があるけれど、今、手持ちの資金がない、というケースなどに有効なのがファクタリングです。「売掛金」という未来の収益を、今の手元資金に変えることができる仕組みで、お金の流れがとてもシンプルでわかりやすくなるため、キャッシュ・フロー経営を進める上でもメリットがある方法です。

次回以降のコラムで、このファクタリングについても解説していきたいと思います。